7スプリット歴史地区
お腹がすいた。スプリットでの遅めのランチは、ブランコの知人が営む小さなレストラン。メニューは海老らしきものがのったトマトのパスタだった。カタカナでも表記のしようがないような、良くわからない単語を言っていたから、おそらくその海老らしきもののことを言っていたのだけど、結局何もわからなかった。少なくともシュリンプとは言っていない。経験から予想するに、多分あれは手長エビだ。味はとてもおいしい。トマトの酸味も絶妙だった。お腹はいっぱい外は陽気。宿ならいくらでも空いてそうだ。今日はこの町でゆっくりしよう。
夕方落ち合う約束をして、この旅初めての別行動。ディオクレティアヌスの宮殿近くのターミナルで車を降り、宮殿入り口に向かう緩やかな坂を歩いて行くと、なんだか過去に味わったことのない、不思議な感覚に落ちていった。宮殿の外壁に沿って立ち並ぶ露店群は日本で見るフリーマーケットとほぼ同じ景色。外壁の窪みという窪みには、有名ブランドがビルトイン形式で軒を連ねているが、少し視線を上げると、帝の宮殿のいたるところから、洗濯物が干してあるのが見える。この独特なハーモニーが何とも言えない。旧市街に洗濯物はよく見るけれど、ここは一味違う。城壁の穴ぼこから洗濯物なのだから。どこかの教授がうまいことを言っていたのを思い出す。ここは生きた遺跡なのです。
宮殿内部は正直想定の範囲だった。うろうろしているのは観光客ばかりだし、そのほとんどは団体で、現地ガイドと、通訳を兼務する旅行代理店の人が各一人というシステム。盗み聴きしといて申し訳ないが、ガイドブックか歴史の教科書で事足る内容が多かった。現地まで来ているのだから、歴史のうんちくに特化しない方が面白いのではないか。どんな場所にも、ちゃんと現在が進行しているのだから。要塞と呼んだ方がそぐうかもしれないこのタフな宮殿の城壁に住むには、どんな手続きとコネクションが必要なのか。そっちの方が興味深い。物干しは別チャージだろうか。
海岸があればどこでもそうかもしれないけど、アドリア海沿いの町では、海に沿った散歩道をよく見かける。オパティアでの散歩が爽快だったから、海沿いを歩いてみようと宮殿を後にした。車を降りたターミナル付近から、小さな湾に沿って西へ歩くと、そこからスプリットのハーバエリアが続いていて、観光ホテルやらカフェやらが立ち並んでいる。ザ、観光地。せっかくの中世の街並みが厚化粧。そんな印象だった。そうはいってもここはヨーロッパの観光地。モデルのような金髪美女にサングラスだ。待ち合わせまでの残り時間、空腹のカプチーノを味わおう。多めに砂糖を突っ込んで。
つづく
Mateo=Rich


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